小論文「半熟卵の半熟性に関する考察」

学位授与式(卒業式)の後の立食パーティー
無料飯(ただめし)を喰らいに行く。
ケーキとポテトチップスとピーナッツばかり食べていた。


良い時代だ。布団の中に居て欲しい史料がゴロゴロ手に入る。
デジタル化万歳。


僕は半熟卵が好きだ。
たとえばハンバーグの上に載っけた半熟卵にナイフを入れ、
輝き滴る黄身の様子は美しくもある。
しかし、先ほどテレビを見ていて、
お好み焼きに半熟卵を載せた様子を誉めそやす出演者一同に奇異を感じた。
この違和感を考えたところ、大変なことに気づいた。
半熟卵は、半熟ではない!
デジタル大辞泉によると、

はん‐じゅく 【半熟】
1 食べ物が十分煮えたりゆだったりしていないこと。なま煮え。
2 「半熟卵」の略。
3 果実などが十分熟していないこと。「―のブドウ」
4 技芸などがまだ未熟であること。「―の演技」

半熟という言葉は新しい言葉なのだろうか。
僕は1と2の意味を奇妙に感じる。これが先ほどの違和感だ。
「半熟」とは「半分熟している」ということであろう。
3の意味が最も正しいように思う。
では熟するとは、どういう意味か。

じゅく・する 【熟する】
[動サ変][文]じゅく・す[サ変]
1 果実などが十分に実る。うれる。「桃の実が―・する」
2 ある物事をするのに、ちょうどよい時期になる。また、ととのって十分な状態になる。「機が―・するのを待つ」「革新の機運が―・する」
3 技芸などに慣れてじょうずになる。上達する。熟練する。「タイピングに―・する」「演技が―・する」
4 ある新奇な言葉が多くの人に使われ、一般に通用するようになる。「その言い方はまだ―・してはいない」

「熟する」と聞くと一般的に1の意味を思い浮かべるであろう。
果実が柔らかくなってジュルジュルになる感じだ。
そう!「熟する」とは固いものが柔らかくなることなのだ!
半熟卵は柔らかいものが固くなっていく過程なのだ!
これが違和感の正体だった!

僕は反論を予想する。半熟卵の場合、「熟する」の2の意味ではないかと。
しかしどうだろう。
我々は、半熟卵の半熟に対して時期的なイメージを持っているだろうか。
否!半熟卵の半熟は柔らかさに対するイメージのはずである!
「半熟」の1の意味は、「熟する」の2の意味から来ている。
そして今言ったように「半熟」の2の意味は、
「半熟」の1の意味や「熟する」の2の意味とはイメージを異にするものである。
よって半熟卵の「半熟」はどこにも意味を求められない奇妙な言葉なのである。
半熟卵は半熟ではない。「半茹」だ!