大衆文芸

万城目学という人の本が、
馴染みのブログで話題になっていたので、
氏の『プリンセス・トヨトミ』という本を読んでみた。

以下ネタバレ注意。


豊臣家の末裔を大阪の人々が代々陰ながら守ってきたという話。
彼ら(大阪国)は日本国からの補助金を使ってそれをしてきた。
その秘密を検査する会計検査院との対決。

この小説の面白さの一つは、
登場人物の名前。
会計検査院の人間は徳川家の人間の、
大阪国の人間は豊臣家の人間の苗字を使ってある。
たとえば僕がこの小説に登場したら会計検査院側の人間だろう。
歴史に詳しくない人には楽しみが半減してしまい、
歴史に詳しい人には楽しいのである。

ただ「無名の人々による、無言の歴史」
という素晴らしい記述がありながら、
大阪の民衆の名を豊臣家臣の名前になぞらえてしまったことは失敗なのだ。
あれでは無名の人々の歴史という感じがしない。
豊臣家臣団の潜伏というイメージを与える。

この小説とても壮大なのだ。
壮大なフィクションにリアリティーを持たせてある。
なかなかワクワクするのだ。
だけど結末は矮小だった。
そして納得のいかない結末。
父子の絆みたいなものを描いているのだが、
父子の絆のために税金五億円使うなよ。
大阪だけ。不公平だろ。
会計検査院は負けるはずがないのに、
なんか人情に訴えて有耶無耶にしやがった。

あぁ、そっか。これが浪花節的ってやつか。
なるほど。