母を蹴って西へ行く

明日、住み慣れた都会を離れるだろう。
春、虫の季節だ。
あの山に戻ると奴らが待ち構えているのだろうか。
しかしいつまでもこの環境にいられるわけではない。
新学期が始まる。
祖母も寂しさのあまり体調を崩している。
戻らなければならない。
母に別れを告げる。涙ぐむ母。
母にとって息子というものはいくつになっても可愛いものらしい。
祖母と母の板挟み。
嬉しくもない。憂鬱だ。
春は、憂鬱だ。