THE mistake

夏休みが始まった頃、僕は燃えていた。
後期の英語の予習をしておくのだ!と。
いくつかの問題を解いた後、長文に出会った。
英文をノートに書き写し、それを訳し始めた。
二行目の訳で挫折した。
どうしたっておかしな日本語になる。
なぜこんなにも情熱を持って勉強に取り組んだのに、
たかだか二行目にしてこのような難解な文章に出会うのか。
三日ほど僕は悩んだ。苦しんだ。
そして挫折したのだ。
このブログを読んでくれている人は覚えているだろう。
8月のことを。
僕がぐれていった様を。ゲームに逃げた様を。酒に溺れた様を。
そう、原因は英文の難解な二行目だったのだ。

9月が訪れた。
僕は何をしていたのか。
二行目に挫折したまま後期を迎えるのか。
英語の出来ない僕は予習をしなければ落ちこぼれるのだ。
自尊心の傷付く不安が9月の台風とともに波浪のように襲ってきた。helloと。
自らを叱咤し、教科書を開いた。
二行目をチラリと見る。
(ここだよ)
恨めしげな目とはっきりと自覚しながら見る。
目で二行目を辿りつつ訳す。
(ここ訳さないと前に進めない)
(でも、あんなに悩んで出来なかったのに再び頑張ったところで……)
ため息を吐きながら目で辿る。
あれ?簡単じゃね?
ノートを開いた。
二行目の前半が三行目の後半に連結されていた。
教科書の二行目と三行目のほぼ同じところに同じ単語がある。
ノートに書き写したとき、
二行目の途中でその単語から流れるように三行目に突入したのである。
その恨めしき単語は『the』。
よくある単語。
よくある失敗。
「ホルモオオオォォォーッ」

はい。
ブログ仲間の何人かがお勧めの
鴨川ホルモー』を読みました。
万城目学さんのデビュー作だそうです。
プリンセス・トヨトミ』もそうでしたが、
彼は登場人物の名前にこだわりますね。
「松永」という名が出れば「松永久秀」を思い浮かべ、
「早良京子」が出れば「早良親王」を思い浮かべます。
歴史好きを楽しませてくれます。
また彼は積極的に実在の地名を出します。
「岩倉」という地名が出れば「岩倉具視」を思い浮かべ、
吉田神社」が出れば「吉田兼和(兼見)」を思い浮かべます。
歴史好きを楽しませてくれます。
作品の感想としては、
プリンセス・トヨトミ』とは違ってすっきりとした出来映えですね。
「ホルモー」などと奇妙なものを描いているクセにアクがない。
馬鹿馬鹿しさが瑞々しい。
素晴らしい、通俗的な作品です。
完璧な面白さと言っていいでしょう。
小説が高尚であるべきという幻想から抜け出せない僕が、
馬鹿馬鹿しいのに素晴らしい小説と認めてしまう逸品です。
小説は高尚で嫌いと漫画ばかり読んでいる方々にもお勧めです。
大変読み易い。

でも、どうせ活字を読むなら純文学の方がいい。
これは個人的な損得勘定の問題。
小説を読むことに何を求めるか。